大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和35年(行)17号 判決 1960年10月20日

原告 関宿一

被告 内閣総理大臣

主文

本件訴はいずれも却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告は、「別紙目録(一)の土地に関する長野地方法務局田中出張所備付の土地台帳の記載と、土地台帳附属地図の記載とを一致させるように訂正せよ。長野地方法務局田中出張所登記官吏が右土地につき昭和三四年九月二五日にした土地表示更正登記を取消す。」との判決を求め、その請求原因として、「原告は大正一一年一二月一三日兄関富治より別紙目録(一)の土地を譲受け、その所有権を取得したものであるが、右土地については国が誤つて関富治所有の別紙目録(二)の土地ととりちがえて土地台帳を作成したため、土地台帳の面積と附属地図の面積とが一致しないものが作成された。原告は、右譲受け以来度々関係官庁に右誤謬の訂正方を要求したが容れられず今日にいたつた。また、長野地方法務局田中出張所登記官吏は原告の申請があつたとして、右土地につき昭和三四年九月二五日附をもつて土地表示更正登記をなした、しかしながら原告はかかる登記申請をしたことはなく、右更正登記は原告不知の間になされたものである。右土地台帳の面積と附属地図の面積の不一致及び土地表示更正登記は国が誤つてなしたものであるから、国は原告に対し、土地台帳の面積と附属地図の面積とを一致させ、土地表示更正登記を取消すべき義務がある。よつて国を代表する被告に対しこれが請求をする。」と述べた。

被告指定代理人は、本案前の答弁として主文同旨の判決を求め、その理由として、「一、被告内閣総理大臣は本件訴について当事者適格を有しない。二、原告は別紙目録(一)の不動産に対する土地表示更正登記の取消を求めるが、登記官吏の処分を不当とする場合は、不動産登記法第一五二条(旧法第一五〇条)、第一五三条(旧法第一五一条)による手続をなし、第一五五条(旧法第一五四条)の決定を得た上、当該処分の取消を求める行政訴訟を提起すべきであるにかかわらず、これが手続を経ていない。右理由により本件訴は不適法である。」と述べ、本案の答弁として、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、請求原因に対する答弁として、「一、原告と訴外関富治との間において、別紙目録(一)の土地二筆につき、大正一一年一二月一三日売買を原因とする所有権移転登記がなされていること、昭和三四年九月二五日原告本人の申請による右土地二筆に対する表示更正登記申請並びに土地台帳地積更正申告がいずれも適法になされていること、右表示更正の結果、右土地のうち四六二番の二の土地の登記簿上の表示は畑二畝六歩内畦畔一歩、四六二番の一の土地の表示は畑四畝二六歩内畦畔七歩、とそれぞれなつていること、は認めるが、その余の事実は知らない。二、土地台帳と公図の不一致を訂正することの請求については争う。」と述べた。

理由

本訴請求中、土地台帳と附属地図との不一致の訂正を求める部分は、その趣旨が、行政庁に対し右不一致の誤謬訂正処分という公法上の行為を命ずることを求めるにあるのか、或いは原告のなした誤謬訂正の申告に対する拒否処分の取消を求めるにあるのか、判然としないが、かりに前者であるとすれば、被告適格の点をしばらく措いても、裁判所としては、法令上別段の定めのある場合のほかは、憲法上の三権分立の建前から、そのような行政上の行為をなすべきことを命ずる裁判をなす権限を有しないと解すべきであるから、その点で不適法な訴といわざるをえないし、またかりに後者であるとしても、行政処分(右誤謬訂正申告に対する拒否処分が、取消訴訟の対象たりうべきいわゆる行政処分であるか否かは相当問題であろうが)の取消の訴は、原則として処分行政庁を被告としてこれを提起すべきことと定められている(行政事件訴訟特例法第三条)から、本件についても土地台帳登録事務を掌る所轄登記官吏を被告とすべきであつて、国もしくは被告内閣総理大臣は被告適格を有しないというべきであるから、その点で不適法な訴といわざるをえない。

次に土地表示更正登記の取消を求める部分については、登記官吏の不動産登記法上の処分を不当とする場合は、同法第一五二条により監督法務局又は地方法務局の長に対して異議を申立て、同法第一五五条による異議についての決定を得たうえ、当該局長を被告として当該処分の取消を求める行政訴訟を提起すべきであるから、国もしくは被告内閣総理大臣は被告適格を有しないのみならず、右異議手続を経ていない点においても本訴は不適法である。

右のとおり本件訴はいずれも不適法であるからこれを却下することとし訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 石田哲一 下門祥人 桜井敏雄)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例